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源氏若紫を拉致


源氏物語・若紫のそれから

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 若紫(=紫の上)は病気がちの尼君と生活をしていた(教科書参照)源氏は若紫を引き取りたいと尼君に何度も申し出たが、尼君はまだ幼いことを理由に断っていた。尼君が死ぬと若紫の父の兵部卿宮が引き取ることになっていた。源氏は若紫を宮に引き取られる前に盗み出すことを決めた。宮がやってくる予定の前日の深夜、源氏は若紫の家の門を叩いた。本文中の大夫は源氏の乳母子の惟光、少納言は若紫に仕える女房である。


 門うちたたかせたまへば、心知らぬ者の開けたるに、御車をやをら引き入れさせて、大夫、妻戸を鳴らして、しはぶけば、少納言聞き知りて、出で来たり。

門を叩いて、車を入れた。大夫が戸を叩き、少納言が聞きつけて出てきた。

 「ここに、おはします」と言へば、
 「幼き人は、御殿籠もりてなむ。などか、いと夜深うは出でさせたまへる」と、もののたよりと思ひて言ふ。

「幼い人は寝ています。どうして深夜にお出ましですか?」

 「宮へ渡らせたまふべかなるを、そのさきに聞こえ置かむとてなむ」とのたまへば、「何ごとにかはべらむ。いかにはかばかしき御答へ聞こえさせたまはむ」 とて、うち笑ひてゐたり。

「宮(兵部卿)へお行きになるそうだが、その前に申し置く~」「なんでしょうか」と笑ってる少納言

 

君、入りたまへば、いとかたはらいたく、
 「うちとけて、あやしき古人どものはべるに」と聞こえさす。

源氏が入る。かたはらいたい少納言「うちとけて~」と申し上げる。解釈はすこし難しいが、源氏が強引に入るので少納言が困っていると、流れから判断。

 

 「まだ、おどろいたまはじな。いで、御目覚ましきこえむ。かかる朝霧を知らでは、寝るものか」とて、入りたまへば、「や」とも、え聞こえず。

「目が覚めてないね。目覚まし申し上げよう」とお入りになる源氏。「や」とも言えない少納言。

 

 君は何心もなく寝たまへるを、抱きおどろかしたまふに、おどろきて、宮の御迎へにおはしたると、寝おびれて思したり。

この「君」は若紫だな。起こされて、宮(父)が迎えにいらっしゃったと思った。

 御髪かき繕ひなどしたまひて、
 「いざ、たまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」とのたまふに、「あらざりけり」と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、

「いざ、たまへ、私は宮のお使いだ」うそですね。「あらざりけり(ちがった!)」と、恐ろしいと思った。

「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」
 とて、かき抱きて出でたまへば、大輔、少納言など、「こは、いかに」と聞こゆ。

いよいよ拉致実行。抱き上げて出る。「これは、どうなさる」と尋ねる女房たち。

 「ここには、常にもえ参らぬがおぼつかなければ、心やすき所にと聞こえしを、心憂く、渡りたまへるなれば、まして聞こえがたかべければ。人一人参られよかし」
 とのたまへば、心あわたたしくて、

「ここには常には参られないので、安心できる所にと申し上げたのに(難しいので中略、右参照)人ひとり参られよ」と源氏

「今日は、いと便なくなむはべるべき。宮の渡らせたまはむには、いかさまにか聞こえやらむ。おのづから、ほど経て、さるべきにおはしまさば、ともかうもはべりなむを、いと思ひやりなきほどのことにはべれば、さぶらふ人びと苦しうはべるべし」と聞こゆれば、

「今日は便なし。宮がやってきたらどう申し上げよう。ほど経てからならどうにもこうにもなるだろうが、思いやりがないので、伺候する人々は苦しい」と申し上げる。

「よし、後にも人は参りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまにと思ひあへり。


 若君も、あやしと思して泣いたまふ。少納言、とどめきこえむかたなければ、昨夜縫ひし御衣どもひきさげて、自らもよろしき衣着かへて、乗りぬ。


 二条院は近ければ、まだ明うもならぬほどにおはして、西の対に御車寄せて下りたまふ。若君をば、いと軽らかにかき抱きて下ろしたまふ。
 少納言、  「なほ、いと夢の心地しはべるを、いかにしはべるべきことにか」と、やすらへば、
 「そは、心ななり。御自ら渡したてまつりつれば、帰りなむとあらば、送りせむかし」
 とのたまふに、笑ひて下りぬ。にはかに、あさましう、胸も静かならず。

 

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古文読解と学習


 小柴垣から垣間見る話はたいていの教科書に載っています。そのとき若紫が十ばかりとありましたが、それから一年たっていません。
 太夫とは惟光のこと。垣間見のときも一緒でした。惟光は源氏の乳母子で家来でもあり仲がよい。
 また、「少納言」はそのとき「少納言の乳母」と呼ばれて「髪ゆるるかにいと長くめやすき人」とあった人物です。



源氏が門を叩かせた。例によって源氏には敬語が使われている。車をそっと引き入れさせた。大夫もいる。
少納言が(様子を)聞いて出てきた。しはぶき=オッホン!。




「ここにおはします」「言ふ」は敬語でないので惟光の発言。「おはす」は尊敬語なので「源氏がいらっしゃっている」と女房に告げたということ。
「幼き人」は若紫のこと。「などか夜深う~」=どうして深夜に~ 
「たより」=ついで



「宮へ渡らせたまうべかなるを~」=若紫が兵部卿宮の元へ行くそうだが ベカ=べく推量+ある ナルは伝聞 「そのさきに聞こえ」その前に申し上げて置きたい 敬語が使われている源氏の発言。
「何ごとにか~」の発言は少納言。どうなさいました、笑って座っている。文脈に関係ない発言で意味不明だが、笑っているということは、源氏とは親しくしていて心を許していることがわかる。
答aは惟光(大夫)、bは少納言、cは光源氏





源氏が入る。「かたはらいたく」=肩身がせまい、見苦しい、気の毒だ、など習ってると思うが、どうも訳しにくい、意味からも主体は少納言だ。語源は「傍らで困る」なので文脈から「源氏の無理に困って」「家を見られるのがはずかしく」などが考えられる。d、少納言が困って(恥ずかしく思って)
「うちとけて~」女房から源氏に申し上げた。古人=年寄りがいる。文脈から遠まわしな断りだろうと考える。今で言えば「部屋が汚いので」



「おどろいたまはじ」起きておられない。「目覚ましきこえむ」目を覚ましもうしあげよう。「かかる朝霧」を理由に。
と言ってお入りになるので「や」とも申し上げられない。断れない少納言。「聞こゆ・聞こえさす」は謙譲語、申し上げる。




君=若紫は無心に寝ている(若紫には敬語が使われている)
「抱きおどろかす」抱き起こす 「宮のお迎へにおはしたる」父である兵部卿が迎えにきたかと思った。「思す」オボス尊敬語。




髪繕い、源氏と紫上はすでに遊んだりしてそれなりに仲がいい。 「いざ、たまへ」さあ、いらっしゃい
「宮の御使い」だと若紫をだます。
「あらざりけり」(父が迎えに来たのでは)なかった。省略が難しいが、一行前に父の宮を待っていたとあることから考える。 「呆る」呆然。 「おそろし」と思った。




「まろ=俺も同じ人だ」ってどういう理屈だ
抱いて出る。
「こは、いかに」これは、どうしたことだ。源氏の行動に驚く女房たち。
e さあ、いらっしゃい。  f 宮のお迎えではなかった。 g これは、どうしたことか。


「ここには、常にも~」敬語からも源氏のセリフ
「常にもえ参らぬ」部分否定、いつも来ることができるわけではない。「おぼつかなし」じれったい ので「こころやすき所」安心できる場所にと 「聞こえし」申し上げた ~。「渡りたまへるなれば」(兵部卿の所へ)行かれるそうだから、ましてお話しがたくなるだろうから。ナリが伝聞だからそこから文脈を推定する必要がある。「人(だれか女房)一人まいられよ」と強引。



「今日は、いと便なくなむ~」少納言の応答
今日は便なし=不都合 宮(兵部卿)が「わたらせたまはむ」おいでになった時(仮定のム)「いかさまにか」どのように 申し上げよう。ほど経て=時間がたって さるべきに=しかるべきに ともこうも=とやかくも はべりなむ=(適当な処置が)できましょう 思ひやり=想像して(敬語がないので自分たちが想像してなかったということ) さぶらふひと=お仕えする人 このセリフをまとめると、今日は宮が来る予定なので不都合である。宮が来た時に若紫がいないと我々女房達はどう申し上げたらいいのか。時期をおいて適当な手段でなされたらなんとかなるでしょうに、考えてもなかったことなので、私たちは困る。。

h 父宮が来た時に、若紫がいない理由を召使いの女房達が説明ができないし、責められるだろうこと。



人=女房
車を寄せる。
どうしようと思いあう女房たち


若紫も不審で泣く
少納言も結局、同乗 若紫だけではなく女房も拉致したことになるかな。








訳はこちらからどうぞ  源氏物語の世界 再編集版